ライフ

【岩瀬達哉氏書評】スノーデン氏の隠密活動暴露に至る軌跡

『スノーデン 独白 消せない記録』/エドワード・スノーデン・著 山形浩生・訳/河出書房新社

【書評】『スノーデン 独白 消せない記録』/エドワード・スノーデン・著 山形浩生・訳/河出書房新社/1900円+税
【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)

 6歳で任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」に夢中になり、やがてコンピュータとインターネットの世界にどっぷり浸かった少年は、13歳の夏、アメリカで重要な科学研究機関のひとつであるロスアラモス国立研究所のウェブサイトにセキュリティー上の致命的な欠陥があることを見つけて通報する。研究所のIT部門代表者はこう勧誘した。「一八歳になったら、是非とも連絡をくれ」

 高校中退のスノーデンが、メリーランド州の試験で高校卒業資格を取得して、CIAの技術職員として採用されたのは、9.11同時多発テロの直後だった。テロの脅威から国民を守り、「世界的な大量監視システムを開発配備」するには、「伝統的な大学の学位」よりもコンピュータ知識を必要としていたからだ。

 CIAでは「技術系スパイ」として、ジュネーブのアメリカ大使館で「外国の信号を盗聴できるようにする特別監視機器」を運用し、横田基地内にあるNSA(全米国家安全保障局)の太平洋技術センターでは「環太平洋地区の各国にスパイ装置を設置」。知識と技術力で評価され、昇進の階段を駆け上ってきた。

 そのまま勤務していれば、順当な成功が待っているはずだった。だが少年時代に見つけたときと同じように「これを読んでいいのは世界で本当に数十人しかいない」極秘情報にアクセスしてしまったのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン