キングコング西野さんとの一コマ。TKにとって忘れられない時間となった

◆「会いたい人に、会う」キングコング西野亮廣さんへのメッセージ

「前を向こう」と自ら動き始めたTKに大きな転機が訪れる。13歳になったTKはキングコングの西野亮廣さんが描いた『えんとつ町のプペル』という絵本に夢中になった。

「ぼくと同じく未完成な人間が主人公であることにひかれました。そしてその絵本展が全国でやっている。すぐに行きたいと思ったのですが、どこの会場も連日超満員。ぼくは人が多いところは体力がもたず、さらに感染症のリスクもあり、行くことができません。だから、最初はあきらめようと思っていました」(TK)

 しかし、まだ見ぬ絵本展への思いは日増しに強くなっていった。そこで、思い切って西野さんに「満員じゃない、絵本展を開催してください」とツイッターでダイレクトメッセージを送ったのだ。驚くべきことに、西野さんから「やろうよー! アートは君みたいな人のためにあるんだから」と返事があった。

 TKは、西野さんが開いた絵本展に行けることになった。西野さんが10組の外出困難な子供とその家族だけのために絵本展を開催してくれたのだ。自身の障害を理由にあきらめる経験を重ねてきたTKにとって、これは大きな転機となった。

「障害者である前に、人として自分の思いや意見を自分の言葉でちゃんと伝えようと思ったんです。そしてもっとたくさんの入院している子供や外出困難な子供たちが、夢を語り、遠慮しないで楽しめる機会を作れる人になりたいと感じました。西野さんがやってみせてくれたおかげで、ぼくは背中を押されたんです」(TK)

◆14歳の誕生日はUSJで、会いたい人と

USJでの記念写真。手術予定日をずらして、この日のために駆けつけてくれた人もいた

 13歳となり、TKは地元の兵庫県と東京都を行き来する生活をスタートさせる。会いたい人に会い、過ごしたいように過ごすことをさらに体現していったのだ。そして、TKが14歳の誕生日に向けて望んだのは、「仲間とUSJに行きたい!」ということだった。真冬のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)にTKの体で行くことはリスクがないわけではない。しかし、もう障害を理由であきらめたくはなかった。ただ、TKには自走式車椅子を漕ぐ体力がなく、USJ内を移動するには電動の車椅子が必要だった。そこで、TKはクラウドファンディングを実施。自身の言葉で訴えた。

〈ぼくが一人で出かけるには電動車椅子が必要です。そして同世代の子が自分の趣味に合う自転車を選んでいるように、かっこいいと思う電動車椅子を選びたい。だけど、僕は歩くことができます。足が不自由なのではなく、体力がないから車椅子を使います。もしかしたら必要性を訴えたら公費補助があるかも知れません。でもぼくはできるだけ本当に必要な人に公費補助は回してほしいと考えました。なぜならば、ぼくには、助けてくれる仲間がいるからです。その仲間とともに『ジュニア世代の内部障害者も堂々とオシャレしよう! 自分の意思で自由に行動しよう!』と訴えたいのです〉(一部抜粋)

 その結果、30日間でクラウドファンディングの目標額を達成した。そして、14歳のTKの誕生日には、分身ロボットOriHimeの開発者・吉藤オリィさん、with ALS代表の武藤将胤さん、フォトグラファーのイシヅカマコトさんら総勢33名をUSJに招待した。「最高の誕生日だった!」とTKは振り返る。

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