●表情
言葉で多くは語らないけれど、酒を口にした時、とても幸せそうな顔でほほえむ。そして、グーと親指を突き出す。これだけで、幸せ感が伝わってくる。つい、「和顔施」という言葉を連想させられます。仏教の「和顔悦色施(わがんえつしきせ)」とは、柔和な笑顔は他への施しとなるという意味。その人の顔を見ただけで人々の心が温まり幸せに。つまり、お布施は財力がなくても笑顔でできる。ストレス満載の時代、吉田さんの人気の秘密はそのあたりにもありそう。
●15分1箇所のテンポ
番組では1時間を4つの酒場で構成。ダラダラと酒を飲み続けるのではなく、15分で一区切りし、また別の地域の酒場へと変化をつけている。
●型がある
番組冒頭に、土地の文化がわかるようなお店(居酒屋以外)にちょっと立ち寄りその土地を紹介する。それから酒場で飲み、最後は店ののれんの前に立って短く感想、そして背中を見せて去って行く。そこに吉田さんの俳句が浮かび上がる、という「型」を踏襲。水戸黄門ではないけれど常に安定した型は、繰り返して見る心地よさを生む。
この番組から生まれたDVDもすでに10巻超、月刊『中央公論』等メジャー文化誌でも連載、著作も多数。放送だけでなく、きちんとソフト商品化して商売を展開していく「コンテンツ産業」のあり方としても優秀と言えそう。ひたすら美味しい酒に酔い幸せになった人の姿を見つめる、という番組の秘めたる力。今後のテレビ番組作りに対してさまざまな示唆に富んでいそうです。