知り合いの競馬ライターがオッズについてさらに掘り下げたところ、昨年の全レースで1番人気のオッズが1倍台だったのは800回ほど。しかし1着は半分以下で連対率は7割に届いていないという。さらに複勝率(3着内率)でも8割以下だったそうで、「オッズ1倍台なら3着は外さないはず」とは言い切れないようである。
さてルメール。オッズ1倍台が騎乗機会の2割超、まさに「ミスター1倍台」だが、勝率は5割以下。3度に2回の連対はさすがだが4着以下が30回ほどある。それでも「ルメールの1倍台は超鉄板」との印象なのは、勝ちっぷりも鮮やかで、終わってみれば「またルメールか」という経験則からだろうか。巷間言われているように「ルメールが乗るから、オッズが下がる」という傾向も少なくない。彼とて魔法使いではなく、走らない馬を勝たせることは難しいのである。
数字は感傷を排する。冷徹にデータを追うと自分の目線がハードボイルド探偵のようになってくる(本当か?)。やはり競馬は馬本位。ちゃんと馬を見て馬券を買わなきゃ。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年2月21日号