ノンフィクション作家の久田恵氏はその実践者。40代後半で母親を看取った後、父親も倒れた。
「病院などに行くときは常に付き添わなければいけなかったので、極力在宅でできる仕事にシフトしていましたが、負担は大きかった。約8年間、在宅で介護を続けたのですが、最終的に父と話し合って老人ホームに入居してもらうことになりました」(久田氏)
その後3年ほど施設の見舞いを続け、父親は娘に見守られて施設で息を引き取ったという。
「年老いた親の介護は職を辞めなければならないケースも多く、子供の人生を変えてしまうほどの大きな問題です。今は子供が年老いた親と一緒に住んで最後まで面倒を見る時代ではない。むしろ離れて暮らしたほうが介護にまつわる家族間のトラブルを避けられると思います」(同前)
2年前、久田氏は自身が70歳になったことを機に栃木県那須のサービス付き高齢者向け住宅に単身で入所した。
「今は団塊の世代でも元気なうちに自らの意思で施設を探して入居する人が多い。私は自分が親の介護で苦労したから、息子家族の人生を変えてしまうようなことはしたくない。子供やその家族とはあえて離れて暮らして自分の生活を優先するほうが、お互いの幸せにつながるんです」(同前)
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号