大学囲碁部で学生に指導碁を打つ依田九段(20歳のとき)

大学囲碁部で学生に指導碁を打つ依田九段(20歳のとき/写真提供:内藤由起子)

 ギャンブルにのめり込むことがあっても、囲碁に対してのひたむきさを失わなかったのには理由がある。20歳前、新宿歌舞伎町に入り浸り、遊び惚けて碁の勉強をしなくなった依田九段が立ち直ったきっかけがあった。先輩棋士からこんな言葉を突きつけられたのだ。

「依田君、何が惨めかって、碁が弱い碁打ちの人生ほど惨めなものはないよ」

 この言葉が心に刺さり、碁に向き直ったという。今でも何かあると、自転車に乗って、亡くなったその先輩棋士の墓参りに行くのだとか。

 プロ棋士なのだから当たり前といえばそれまでだが、対局前夜は、酒はほどほどでさっと切り上げるようになった。酒もギャンブルも結局はやめられないのだが、囲碁には真摯に向かった。

 いまも依田九段の碁に対する真っ直ぐな気持ちは揺らいでいないだろう。

「棋譜(打った碁の記録)は生きた証」と依田九段は言う。今回の日本棋院とのゴタゴタで、半年間、生きた証を残せないことになる。

 依田九段は〈このところの一連の棋院の対応は理解しかねる〉として、近日中に記者会見を開く予定だという。自身のブログでは、〈日本棋院現執行部のつき続けてきた嘘を明らかにする〉としたうえで、〈記者会見で執行部の嘘を証明できなかったら切腹する〉と綴るなど、並々ならぬ覚悟がうかがえる。

「絶対にウソはつかない」を信条に、囲碁人生だけは愚直に歩んできた依田九段──。果たして日本棋院との“ドロ仕合”は、どう収束するのだろうか。

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