一方で母は、昔から機械モノが苦手で大嫌い。独居になった当初、携帯電話を検討したが、やる気も関心もなく即あきらめた。ただ、世の中の人がスマホに夢中なのは気になるらしい。

 電話機かと思えばニュースや動画が見られたり、突然「はい、ママ笑って!」と向けられ、写真を撮られたりもする。なんだか不思議な代物だと思っているに違いない。

 最近は家族旅行の写真もスマホで撮るようになった。いつも手元にあるから、いい景色や家族が笑ったタイミングで、構えずに撮れるのがいい。当然、母は撮られるばかり。

 そんな母が「次は私が撮るわ!」と言い出したのは、紅葉がきれいな公園でのことだ。正直、困った。昔のデジカメならまだ使えたかもしれないが、スマホのカメラは難しいだろう。でも母はやる気満々。じゃあ形だけでも…。

「あのね、これがシャッター。昔のカメラみたいに押せないの。触るんだよ」と、スマホを見せた。画面にはスタンバイする夫と娘が映っている。

 意外にも母は興味津々。案外、偶然に撮れるかも…。

 そして私も配置についた。母の指が動いている。すると、「ズバババババ!」という爆音とともに、母がのけぞった。連写モードだ! まるで映画『セーラー服と機関銃』のようで、みんな大爆笑。母も笑い転げた。画面には足先だけの写真が無数に並んでいた。

「おばあちゃん、スマホ、結構好きかもよ。簡単なゲームとか教えてあげなよ」と、後から言ったのは娘。確かに楽しむ才能はあるかもしれない。

※女性セブン2020年3月5日号

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