「通常は『緊張します』『胸を借りたい』と語るところです。藤井さんが投了後に人目を憚らず泣く姿を見たことがありますが、彼は常に自分の勝利を疑わないのでいざ負けるとショックが大きいのでしょう。棋士は対局前に弱気になると、相手が大きく見えて不利になります。トップ棋士との戦いを前に『楽しみたい』と語る藤井さんは、勝負師の資質に恵まれています」
9×9の81マスが無限の可能性を秘める将棋界。歴戦の棋士たちが織り成す思考と名言は、次世代に受け継がれていく。
●かとう・ひふみ/1940年生まれ、福岡県出身。1954年8月、史上最年少の14歳7か月で四段となりプロに。この記録は藤井聡太現七段が2016年に14歳2か月でプロになるまで62年間破られなかった。通算対局数歴代1位で、タイトルは合計8期獲得。2017年の現役引退後は芸能活動を行ないながら、仙台白百合女子大客員教授も務める。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号