スポーツ

江本孟紀氏 ノムさんが要求した「ど真ん中の直球」の真意

恩師・野村克也さんと江本孟紀氏(2015年、撮影:山崎力夫)

 監督として通算1565勝をあげ野村克也さんは生前、「江本(孟紀)、門田(博光)、江夏(豊)の『南海の3悪人』に、指揮官として育ててもらった」とよく口にした。個性豊かな主力選手と向き合うことで、監督としての基礎を学んだのだという。名前の挙がった一人である江本孟紀氏(72)は、1971年にドラフト外で東映に入団後、2年目に南海へトレードされ、野村さんと出会った。

 1973年10月、パ・リーグ前期1位、後期3位でシーズンを終えた南海は、パ・リーグ優勝を目指して阪急とのプレーオフを戦った。その結果、3勝2敗で南海が優勝、巨人との日本シリーズに歩を進めた。当時、選手兼任監督の野村さんとバッテリーを組んでいた江本氏が、同プレーオフで体験した「捕手・ノムさんのリード」を振り返る。

 * * *
「悪人」と言われますが、ボクはノムさんのサインに首を振ったことなんて一度もないですよ。南海にいた4年間で1度もない。サインを出すのが捕手兼監督だから、その通りに投げて打たれても、監督が悪い。ボクの責任にならないですからね。そういう、ある種の開き直りがありました。

 ただ、ノムさんは「ワシのサインが気に入らんかったら、遠慮なく首を振れ」と言っていたし、サイン通りに投げて打たれると、ベンチに戻ってから「悪かったな。すまんすまんワシのせいや」と謝りに来てくれました。

 ノムさんのリードの基本はインハイ・アウトローの対角線。しかし、ボクの場合は、ここぞという場面で「ど真ん中のストレート」を要求された。ボクはコントロールが安定している時はいいが、突然乱れることがある。その兆候が出た時に、「ど真ん中のストレート」のサインが出るんです。それを見ると、“(ノムさんが)オレの調子が悪くなったのを気が付いたな”と感じましたね。

 とはいえ、ボクの球は江夏と違って要求されたところにはいかない(笑い)。アウトローに流れるか、インハイに浮く。そうなると、打者は配球が読めないし、こちらはプレッシャーなく思い切って投げ込める。そんな一石二鳥を狙うのが、ノムさん流のリードでした。

 1973年に、当時の絶対王者・阪急とぶつかったパ・リーグのプレーオフでは、その「ど真ん中のストレート」でリーグ優勝を手にしました。

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン