国内

対馬の仏像盗難から8年 韓国から返還されない現状に島民は

対馬から盗み出された海神神社の「銅造如来立像」(左)と観音寺の「銅造観世音菩薩坐像」。右の一体は韓国から返還されていない(Yonhap/AFLO)

 韓国人観光客の足が遠のいたことによる対馬の窮状が伝えられている。対馬の住民はいま、何を思うのか。ソウル在住のジャーナリスト藤原修平氏が対馬を訪問した。

 * * *
 対馬の島民と韓国や韓国人について話をしていると、相手の表情にだんだん影が差してくることが多かった。そんな時は大抵、「韓国人は仏像を、ねえ」と切り出された。2020年2月初旬、韓国の釜山から高速船で対馬を旅行しに訪れた時の話だ。

「韓国人は仏像を~」とは、2012年10月に対馬で二体の仏像などが韓国人窃盗団に盗難された事件のことを指す。事件の翌年、韓国で犯人グループが逮捕され、韓国当局により仏像二体は無事に回収された。

 そのうちの一体は、“対馬一ノ宮”として知られる海神神社(対馬市峰町木坂)の「銅造如来立像」(国指定重要文化財)だった。文化財の不法な流入・流出を防ぐための国際条約「文化財不法輸出入等禁止条約」に則り、2015年に対馬に返還された。

 ところが、同じ対馬の観音寺(対馬市豊玉町)から盗み出された高麗時代の「銅造観世音菩薩坐像」(長崎県指定有形文化財)は、話が違った。韓国西部・忠清南道瑞山市にある浮石寺が「倭寇に略奪された仏像だ」と“仏像の所有者”として名乗り出たのである。

 これを受け、2013年2月に韓国の大田(テジョン)地裁は、仏像を対馬に返還するかどうかについて、“倭寇に盗まれる前からの所有者として名乗りを上げる者がいるかどうか”を基準に判断した。浮石寺の場合、倭寇が奪っていく前の所有者だった可能性があるので、それを根拠に対馬へ戻すことは不要としたのだ。

 盗難事件自体も犯人が韓国人窃盗団だったことで注目を浴びたが、盗難を正当化するかのような大田地裁の判決は、地元・対馬はもちろん日本社会を驚嘆させた。

 しかし、対馬の人たちが「仏像を、ねえ」と切り出すとき、返還されないことへの不満だけではなく、そもそも仏像が盗まれたことに強く怒っているように感じた。「普段拝んでいるものを、誰も見てないからと持っていっちゃうなんて、考えられません」と顔をしかめる島民は多い。

 今年2月14日付のローカル紙・対馬新聞のトップ記事は〈仏像盗難 あれから8年〉という見出しだった。記事のなかで観音寺の住職は「是非仏像盗難事件のことを思い出してほしい」と訴えている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト