保守的な中西部の田舎ということもあるのだが、背が低いことや一重まぶたであることでさえ揶揄の対象となる。学校のロッカーには「このJAPめ、オレらがもう一度原爆落とす前にさっさと日本に帰れ」なんて落書きをされ、学校はこれをまったく問題視せず卒業までの1年半放置された。結局これは人種差別の一種でしかない。だからこそ私はアメリカ人というだけで立派とも思えないし、北欧だろうがフランスだろうがクソみたいなヤツは大勢いると感じている。
その国の実情を知るには、映画を観ればそこそこ分かるもの。海外映画では暴力シーンや差別シーンは度々登場する。当然ながら「きれいでない白人様」も存在するのである。
一方、日本ではコロナについて、多分「怒られたくない」「人でなしだと思われたくない」という感情があったことが大いに影響したことだろう。中国・武漢がヤバい状況になっていることは1月上旬に分かっていたが、1月24日の春節の時期に安倍首相は中国人観光客を歓迎する意向を北京の日本大使館HPに掲載(現在は削除)。
箱根の個人商店が「中国人お断り」の紙を出したことがネットで「人種差別」だと猛烈なバッシングをくらった。これを批判した人は全力で冒頭のフランスの件についても叩かなくてはいけない。もっとも店主の行動は人種差別ではなく、安全対策ともいえるが。国がそれをやらなかったから個人がやったということだ。中国からの渡航は1月中旬までにはさっさと禁止すべきだったのである。
しかし怒られたくない日本政府と役人は「観光業者から怒られたくないし、人権派からも怒られたくないもんね~」とばかりに「歓迎」の意向を出し「人から人への感染はない」と言いきった。各国が中国様からの渡航を禁止したのを知り、ようやく追随。まさに日和見主義。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2020年3月13日号