同じく第6回では、細川晴元が諸臣が居並ぶ将軍の御前で許可なく鼻をかんだことを例に挙げ、将軍側近の細川藤孝(眞島秀和)が憤る場面が出てくる。これは現実にあってもおかしくない光景だろう。
将軍側近の三淵藤英(谷原章介)や細川藤孝からすれば、幕臣・細川晴元の家臣である三好長慶や三好の家臣・松永久秀は本来、歯牙にもかけないような存在だ。下剋上はびこる戦国の世であれば、実力こそが物を言う。太平の世とは異なる論理が働いていた関係上、第5回で描かれた三淵藤英が松永久秀の陣屋を訪れる場面のように、ため口どころか、松永久秀のほうが恪上のごとく振る舞うことも許されたのだった。
第6回では、細川藤孝から将軍側近になるよう勧められた光秀が、今は無理としながら、「5年先か10年先には美濃一国挙げて将軍にお仕えする」と返答していた。それが果たして実現するのか。実現したとすれば、鉄砲を買いたい光秀のために松永久秀が一肌脱ぎ(第1回)、都の誰からも恐れられる久秀に光秀が好感を抱く(第6回)など、これまで上手くいっていた光秀と松永久秀の関係はどうなるか。それらは今後のお楽しみである。
【プロフィール】しまざき・すすむ/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。著書に『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)、『いっきに読める史記』(PHPエディターズ・グループ)など著書多数。最新刊は『覇権の歴史を見れば、世界がわかる』(ウェッジ)。