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鴻上尚史氏が選んだドラえもんのSF(すこし・ふしぎ)作品

鴻上氏はタイムパラドックスを説明した名作回を選んだ

 ドラえもん誕生50周年の2020年、各界の“ドラえもん好き”著名人に、22世紀に伝えたい言葉、場面を聞いた。作家・演出家の鴻上尚史氏が選んだのは、てんとう虫コミックス『ドラえもん』第9巻「ぼく、桃太郎のなんなのさ」だった。

 * * *
 この話に出会ったのは、高校か大学生の頃。それまでも「ドラえもん」が大好きでしたが、大人になっても楽しめることを知り、作品に対する見方が変わりました。なぜかというと、タイムマシンで過去を改変することによって、未来の事象に影響を与えてしまう「タイムパラドックス」について、わかりやすく、楽しく描かれているから。

 不思議な写真を見つけたドラえもんとのび太が、タイムマシンで過去に行ってみるとそこで見たものは……、というストーリーは、まさにタイムパラドックス。大人になっても面白いと感じられるSF物語だと思います。

 生前、藤子・F・不二雄先生は「SF(サイエンス・フィクション)」のことを「すこし・ふしぎ」とおっしゃっていましたが、まさに藤子先生らしい、楽しくてちょっと不思議なお話です。

【てんとう虫コミックス『ドラえもん』第9巻「ぼく、桃太郎のなんなのさ」とは】
 空き地で行き倒れていたオランダ人。彼は、600年ほど前から家に伝わる不思議な絵の謎を解くために、日本に来たと話す。だがその絵はどう見ても、「桃太郎」が写った「写真」だった。600年前に写真はないはず──のび太たちは早速、タイムマシンで637年前に向かうが、タイムマシンが故障して現代に戻れなくなってしまう。仕方なくドラえもんのひみつ道具で危機に立ち向かううちに、桃太郎になって鬼退治をすることになった

鴻上氏は舞台版ドラえもんを手掛けた(提供/鴻上尚史)

●こうかみ・しょうじ/1958年生まれ。愛媛県出身。舞台公演の他、映画監督、エッセイストなど幅広く活動。ドラえもんファンを自任し、2008年、2017年には舞台版ドラえもん『のび太とアニマル惑星』を手がける。

(C)藤子プロ・小学館

※週刊ポスト2020年3月13日号

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