◆問われる管理職の存在意義
じつは、部下よりももっと危ないのは上司、管理職である。
彼らは目の前にいる部下に対して何かと口を出し、指導や助言を行ってきた。また情報を伝達したり、仕事を調整したりすることが主な役目だった。それによって、他人から認められたいという「承認欲求」を満たしていた。また彼らにとっては会議やミーティングは「ハレの舞台」であり、その場を仕切り、意見をまとめたりすることで存在感を示してきたのである。
テレワークで目の前に部下がいなくなると、自分の「偉さ」を示すことができない。それだけではない。テレワークが首尾よく機能したら、上司がいなくても仕事に支障がないことが明らかになってしまう。仮に上司がいないとむしろ仕事がはかどるというような声が広がりでもしたら、上司にとっては大変だ。「やっぱり課長がいてくれないと……」という声が広がることを心の中で期待している管理職もいるのではなかろうか。
いずれにしてテレワークによって管理職の存在意義が問われることは間違いない。では、どうすればよいか?
管理職の役割は部下の管理だと思い込んでいる人が多いが、管理職の原語は「マネジャー」である。そしてマネジャーの役割は人の管理ではなく、仕事のマネジメント、すなわち自分が担当する部署の業務を効率的に遂行し、組織の目標を達成することだ。
人の管理はそのための手段に過ぎず、目的や目標ではないのである。部下に働きやすい環境を提供してモチベーションと生産性をあげてもらい、その実績と評価によって承認欲求を満たすようにすればよい。
テレワークを機に会社も、管理職自身も原点に立ち返り、そこから社員、部下との関係性を見直せば日本企業にとっても、「災い転じて福」となるかもしれない。