84歳で亡くなった野村克也氏は、多くの人の心に響く言葉を残した。
〈よい監督とは、もちろんそれなりの結果が伴うことを必要とされる。勝負の世界であるから結果至上主義なのは当然だが、いい結果を出したいからこそ、まずは選手たちの「人づくり」に励むのである〉
『野村ノート』(小学館文庫)の一節だ。監督とはどうあるべきかを網羅した1冊だが、内容はリーダー論に通じる部分もあるし、〈「人生」と「仕事」は常に連動しているということを自覚せよ〉〈人生論が確立されていないかぎりいい仕事はできないということを肝に銘じておく〉といった言葉は人生訓としても読める。
〈名捕手と呼ばれるキャッチャーが少なくなったことに、いまのプロ野球のレベル低下の大きな原因がある〉
こちらは『野村の遺言』(同)にある言葉だ。同書は「捕手」がテーマだが、やはり論じる内容のスケールは野球論の枠内にとどまらない。
〈プロフェッショナルとは、「恥の意識」をもつことだ〉〈自分を戒めるからこそ、ミスをした原因を究明し、修正しようという気持ちが生まれる〉〈「プロのプライドが許さない」と自覚しているかどうかが、成功と失敗を分ける〉
監督として、捕手として、高いプロ意識を生涯持ち続けたからこそ、野村氏の言葉は胸を打つ。
※週刊ポスト2020年3月13日号