その後も『君のいない食卓』、『ひとり居の記』など、妻と過ごした日々が数々の著書で綴られた。

「記憶がしっかりしているうちに家内との思い出を書き留めておこうと思ったんです。

 記憶とは不思議なもので、最初は病や看病のことなど悲しいことばかり思い出すのですが、7年を過ぎた頃から、家内との楽しい出来事を思い出すようになるんです。間もなく十三回忌ですが、いまは家内の笑顔ばかり思い出します。仏教の七回忌や十三回忌は、故人の知恵なのだと思うようになりました」

 この「悲しみの向き合い方」について、恋人・夫婦仲相談所所長の三松真由美さんが語る。

「遺された男性にとって最も大切なことは、仕事などで社会との接点を持つことなんです。ボランティアや地域活動、あるいは俳句やゴルフといった趣味の会でもいい。どこかで誰かと繋がっていることが、絶望から再生への第一歩になる。食事など生活面での苦労は、宅配を頼ったり、男の料理教室に行くのもいい。そこでまた新たな出会いがありますから。

 川本さんもおっしゃっていますが、20歳年下の茶飲み友達をつくることはお勧めです。同世代だと健康や亡くなった妻の話になりますが、20歳下なら自分の夢や未来を語る世代だから刺激になり、自分も何かに挑戦しようかと前向きになれます」

 悲嘆に暮れながら生きる姿は、天国の妻が望んでいないはずだ。

※週刊ポスト2020年3月13日号

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