「他にも、耳鳴りやめまい、さらには自律神経や内分泌を司る脳の視床下部という部位の機能低下によって身体の免疫力も落ちてしまうことがあります。インフルエンザや新型コロナ肺炎など細菌やウイルスによるあらゆる感染症にかかるリスクが高まります」(同前)

 こうした感染症は高齢者のほうが重篤化し、死に至ることが多い。難聴は“死の病”につながっているともいえる。

 2011年に米サニーダウンステート医療センターが発表した研究では、「内耳が弱って難聴になっている人は、同時に平衡感覚も衰えてしまい、転倒しやすくなる」とも分析している。歳を重ねてからの骨折は寝たきりの原因にもなり、それをきっかけに要介護状態となるケースが多いことでも知られている。

 また、老人性難聴が重大疾患の“サイン”だと考えられることもある。動脈硬化による心疾患や脳血管疾患がそれにあたるというのだ。

「血管条と呼ばれるクモの糸のように細い内耳の血管は、動脈硬化によって血流が滞ったり、途絶えたりといった影響を受けます。その結果、内耳に障害が出て難聴が生じやすくなる。糖尿病や高血圧の人で耳が聞こえにくくなったという場合、動脈硬化の進行を疑う必要があるといえるでしょう」(同前)

※週刊ポスト2020年3月20日号

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