芸能

春風亭一之輔 演出に磨きを掛けた濃密25分の『浜野矩随』

春風亭一之輔の「浜野矩随」の魅力とは(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、『笑点』の司会者を長く務めた五代目三遊亭円楽の十八番で一時間はかかる大作としても知られる『浜野矩随(はまののりゆき)』を、春風亭一之輔がコンパクトながら演出に磨きをかけて2020年に披露した様子ついてお届けする。

 * * *
 春風亭一之輔が今年『浜野矩随』をネタおろしした。初演は1月16日に日本橋公会堂で行なわれた桂吉坊との二人会。一之輔が『短命』で爆笑させた後、吉坊がネタ出しの『帯久』を1時間10分みっちりと演じ、休憩の後に吉坊が5分の小咄『七福神』を披露。『浜野矩随』をネタ出ししている一之輔が高座に現われたのは20時50分。「私の『浜野』はごく短いのでご安心ください」と前置きして本題に入っていく。

 矩随が若狭屋に三本足の馬を彫って持ってきた。それは彫り損じではなく、腰元彫りの名人と謳われた父の作品を真似たもの。若狭屋が「矩安さんは三本足で彫っても四本に見えたんだ。お前の彫るものにはお前が出てない」と叱ると、矩随は「若狭屋さんは彫り物師ではありませんから」と、言ってはいけない台詞を吐くが、若狭屋は辛抱強く「私は道具屋に命を懸けてる。お前も命懸けでやったらどうなんだ」と説く。

「お前の彫ったものを幾ら出しても欲しいと言う人が出てこないとダメなんだ」と言う若狭屋に、矩随は「お金のために彫っているのではありません」と口答え。若狭屋は「私がいつも一分で買ってるのは金じゃないって言うのか! お前はヘタなんだ、一分持って帰れ! 二度とうちの敷居を跨ぐな」と追い返す。

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン