ライフ

【著者に訊け】中村光博氏 戦争孤児を通じ戦争の酷さを描く

中村光博氏はなぜ戦争孤児をテーマに選んだのか

【著者に訊け】中村光博氏/『「駅の子」の闘い 戦争孤児たちの埋もれてきた戦後史』/幻冬舎新書/880円+税

 2018年8月放送のNHKスペシャル『“駅の子”の闘い~語り始めた戦争孤児~』でも、すでに80歳を超えた取材対象の話に真摯に耳を傾ける、若いディレクターの背中が印象的だった。

「私自身は親も60代ですし、戦争の話は祖父から少し聞く程度でした」

 だがNHK大阪在籍中の2015年、中村光博氏は戦争で親を失い、駅に住み着いた通称「駅の子」の存在を知り、〈70年も前の戦争〉が〈たった70年前に〉、一気に近づく感覚を覚えたという。

 例えば空襲で家を失い、日に日に弱っていく母親を三宮駅構内で看取った、内藤博一さん(85歳。以下、年齢は放送時のもの)は言う。〈あそこだけは、いまでも足が向きませんし、私はいまだにこの戦争が終わった、平和やなという気持ちは持ってません〉と。

 戦死や戦災で親を亡くし、全国に12万人いたともいう戦争孤児。実はその保護に今の児童養護施設のルーツがあったことなど、自身、発見の多い取材だったとか。

「駅の子という言葉を知ったのは、ある勉強会で立命館宇治中学・高校の本庄豊先生のお話を聞いたのがきっかけでした。戦争孤児を授業でも取り上げている先生によれば、空襲を免れた京都駅に住み着いた孤児の存在は生徒の関心も高いそうです。今まで戦争孤児に関しては上野方面に証言が偏る傾向があったんですが、実際は日本各地に駅の子がいて、もっと多様な戦後史を刻んでいたはずなので、取材を進めました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン