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2020.03.14 16:00  週刊ポスト

中村梅雀 「『伝七』は格好よくなくていい。庶民でいい」

 二〇一六年には父の当たり役である『伝七捕物帳』(NHK・BS)に主演している。

「やりにくいと思ったのは事実です。父のあのスター芝居には太刀打ちできないと。

 全く新しいものであればという条件で受けました。吉田啓一郎監督も『梅雀さんの伝七を作りましょう』と言ってくれましたから。本当にいいチームで。

 伝七をやることを父に報告した時、使っていた十手を貸してくれました。『伝七は庶民だから、法の側にいても人を裁くという目にはならない。庶民のために悪と戦うということは忘れないように僕はやっていた。あとは好きにやったらいいじゃないか』と言っていましたね。

 父はただ格好いい見得や江戸っ子の気風の良さを見せつけるような、そういうスター芝居をしているように見えていたのですが、全然違う。格好よくなくていい。庶民でいい。

 伝七が人を殺してしまった傷を負いながら十手をもらう物語から始まっているのもうれしかったですね。もらった命でもって庶民を守る使命という、命を吹き込んでもらえました。

 あと、立ち回りだけはちゃんとやろうと。大好きなんです。

 翫右衛門が名手で。八十一歳ですい臓がんの末期なのに大立ち回りをやって、周りの若い役者より全然速い。それを僕もやらないと、と思ってきました。

 ギリギリの間合いのリアルさ、人間の闘いを目指しています」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。

■撮影/黒石あみ

※週刊ポスト2020年3月20日号

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