芸能

中村梅雀 「『伝七』は格好よくなくていい。庶民でいい」

中村梅雀は父の当たり役を演じて何を思ったか

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、中村梅雀が父・梅之助の当たり役である『伝七捕物帳』に主演したときについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 中村梅雀は二〇〇七年、二十七年にわたり所属した劇団・前進座を退団、フリーの道を歩む。

「経済的にどうにもならなかったんです。舞台に使う化粧品やテレビに出るときの衣装は自前で、衣装代が払えない。

 それなのに、年間に何千万稼ごうが劇団ではどこまで行っても上から三十二番目。給料は大学卒の初任給より安い。主役をやっても、通行人やってる先輩の方がはるかに給料がいい。僕は客寄せパンダ的になっていて、主役だけでなく演劇の合間に踊りをやったりしても、評価の対象にもならなかった。誰も『ありがたい』と思わない。『後輩だろ』って顔をしているんです。

 それから後輩は後輩で『梅雀さんが外で稼いできてくれると、僕らは好きに芝居ができます』って。それもカチンときました。

 人間関係も嫌、経済的にも嫌、演目も嫌。何も僕を救うものがない。父・梅之助は止めませんでした。『止めなきゃいけない立場だけど、気持ちは物凄く分かる。後押ししよう』って言ってくれたんです。

 父もやめようと思ったことがあるそうです。でも、『もっとここで盗むべきものがある』と先輩に諭された。目標があったんですよ。翫右衛門がいましたから。でも、僕にはなかった。

 劇団を出てから、責任が強くなりました。僕が失敗したらこのチームは食えなくなる、と。

 劇団にいた頃は失敗しても、安いけど給料はもらえるという逃げ道がありました。その甘さに気づきましたね。それから、仲間のことが愛おしくなったんです。ワンカットにこんなに集中してくれる仲間がいる。劇団時代とは愛情が違います」

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン