国内

体外受精の無断出産 “男の産まない権利”と父親としての責任

想定外の現実に法はどう向き合うのか(時事通信フォト)

 別居後の出産をめぐる元夫婦の訴訟トラブルである判決が下った。そこで初めて認められたのは「男の産まない権利」。一体どういうことなのか。

 ある日突然、長らく別居中の妻から「あなたの子供を妊娠しているの」と言われたら──。しかもそれが性交渉ではなく、関係が良好だった頃に不妊治療で「凍結保存していた受精卵」で妊娠・出産しようとしているとしたら……男性はどんな感情を抱くだろう。これは、現実に起こった話だ。

 3月12日、大阪地裁で注目の判決が下された。別居中の妻(その後離婚)が凍結保存された受精卵を無断で使って出産したとして、40代男性A氏が元妻などに2000万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は「男性の自己決定権を侵害した」として元妻に慰謝料など880万円の支払いを命じた。

 A氏は2010年に結婚し、2013年から都内のクリニックで不妊治療を開始。しかし、その後、夫婦関係が悪化し、2014年に別居した。

 その翌年、元妻は不妊治療時に凍結保存された受精卵を移植し、妊娠した。元妻は翌2016年に長女を出産。その後、2018年に夫婦の離婚が成立した。A氏は元妻の出産が無断で行なわれたものだと訴えた。

「別居中の妻からLINEで体外受精による妊娠や出産を知らされていたA氏は、『精子は提供したが、移植には同意していない』と主張した。元妻がクリニックに提出した移植に関する同意書は、元妻がA氏の名前を勝手に署名したものだという。

 裁判所は偽造を認め、元妻は男性が移植に同意していないことを認識していたと指摘し、『元妻との間に子供をもうけるかどうかをA氏が決める権利を侵害した』としたのです」(全国紙司法担当記者)

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン