待合室の長椅子は、マスク姿の患者でぎゅうぎゅう詰め。あちこちから咳やくしゃみの音が聞こえてきて、なかには激しく咳き込んでいる人もいる。
2時間も待たされ、やっと診察が終わったと思ったら、今度は会計の呼び出しがなかなか来ない。朝8時に来て受付を済ませたのに、病院を出たのはお昼の12時を回っていた。
こうしたことは“病院あるある”の1つだが、いまの時期は“いつものこと”とやり過ごせない。この待ち時間が、生死にかかわるかもしれないからだ。
大分県大分市にある国立病院機構大分医療センターでは、医師や看護師、入院患者らが新型コロナウイルスに連鎖的に感染。調査に入った厚生労働省のクラスター対策班は、3月1日以降に院内感染が始まったと明らかにしている。
兵庫県姫路市の仁恵病院でも11人の入院患者と看護師2人が感染。各地で病院内での感染が目立ちはじめている。
病気を治す場所であるはずの病院が、いまでは新型コロナウイルスを「うつされる」場所になっているのだ。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんが、病院の“危険性”をこう指摘する。
「病院は、そもそも病気を持っている人が集まっている場所です。さまざまな感染症の人がいるので、感染リスクが高いのは当然。医師は患者が変わるごとにマスクを替え、手を洗い、アルコール消毒をしていますが、それでも感染症にかかってしまう。それほど病院は感染しやすい場なのです」
病院の入口には必ずといっていいほど消毒用アルコールのボトルが置かれているが、手の消毒が徹底されていない病院も多いという。
なかでも、待合室が新型コロナウイルスに感染するリスクが最も高いと指摘するのは、ちくさ病院総合内科の近藤千種さんだ。