ここでTDRとUSJの入場者数の推移(会社発表)を見てみよう。
【2010年度】TDR=2536万人/USJ=750万人
【2011年度】2534万人/880万人
【2012年度】2750万人/975万人
【2013年度】3129万人/1050万人
【2014年度】3137万人/1270万人
【2015年度】3019万人/1390万人
【2016年度】3000万人/1460万人
【2017年度】3010万人/非公開
【2018年度】3255万人/非公開
※TDRの入場者数はTDLとTDSの合計
TDRの入場者数は、リーマン・ショック(世界金融危機)直後の2008年度の2722万人がピークで、その後低迷が続いたが、2012年度に2750万人を記録。そして、2018年度の入場者数は3255万人と過去最高となった。「東京ディズニーリゾート35年イベント」が寄与した。
TDRにはこんなエピソードがある。「3・11東日本大震災」は、東京ディズニーリゾートを楽しんでいた人々も襲ったが、7万人といわれた入場者を救ったのはキャストと呼ばれる現場で働く従業員たちだった。
あるキャストは防災頭巾代わりに人気キャラクターのダッフィーとシェリーメイのぬいぐるみを入場者に配った。別のキャストは、入場者の不安を取り除くために「安全の妖精」を演じた。また電車も止まり、夜が近づいてくると、防災食の代わりに、お土産を配る従業員もいた。
じつは、TDRは「震度6、来場者10万人」を想定とした防災訓練を年180回も行っており、緊急対応のノウハウが蓄積されていた。だから、現場がそれぞれ自分の判断で入場者に対応することが可能になった。そんなキャストの防災対応が大評判になり、ディズニー人気がさらに高まった。震災後も入場者数が減らなかった“隠れた要因”といえる。
数字を見ても確認できる。TDRの入場者数は2011年度で2万人減となったが前年度比でほぼ横ばい。その後、2012年度は8.5%増と回復し、2013年度は13.8%増と2ケタの伸びを記録した。ものすごい回復力(復元力)である。今回のコロナウイルス禍でも、小休止した後に再び上層軌道に乗せることは十分可能だろう。
対するUSJの入場者数は開業年度2001年度の1102万人をピークに、その後は800万人台で推移していた。再び、勢いが出始めたのは2011年頃からだ。
2010年にマーケティングのプロ、森岡毅氏がUSJの再生に招かれた。後ろ向きに走るジェットコースターなどズバ抜けたアイデアを次々と繰り出し、ヒットを連発。2013年度には開業年度以来の1000万人を突破した。
2014年度にはハリー・ポッター・エリアを開設。爆発的な人気を呼び、2016年度には1460万人を記録した。森岡氏は就任後、入場者数を倍増させたことから、「USJを再生させた男」と呼ばれた。
株主が交代したのに伴い、森岡氏は2017年にUFJを去ったが、人気エリアが出来れば、強力な磁石のように若い人を引き寄せることを数字が如実に示している。USJも2012年度は10.8%増。2013年度は7.7%増で1000万人の大台に乗せた。こちらの復元力も半端ではない。
新型コロナウイルス禍は、リーマン・ショックや東日本大震災を超えるほど経済に与えるマイナス影響が懸念されている。だが、強い企業や組織をより強くするという意味では、テーマパークの反転攻勢、V字回復は早そうだ。