真栄田はそのことを伝えるために六本木に内間を呼び出した。その頃、2人はよく六本木で飲んだ。と言っても、コンビニで発泡酒を買って、ガードレールに腰掛けて飲むのだ。真栄田は飲みながら「金持ちを見とけ。いつかおれたちもああなるぞ」と言うのが常だった。
内間が来るなり、真栄田は「エンタから呼ばれたんだ」と告げた。内間は大喜びした。続いて、じつは出演依頼を受けたのは自分1人だけなのだと説明したが、それでも内間は「めっちゃ嬉しいです」と笑顔を見せ、今日はおれが奢るのでお祝いしましょうとまで言ったという。内間が当時の心境を振り返る。
「おれは賢さんのファンなんで。なので、自分たちが売れる売れないの前に、真栄田賢という人間をいろんな人に見て欲しかったんです。だから、形としては不本意でしたけど、嬉しかったというのは本当です」
真栄田は『エンタの神様』に「フランチェン」というフランケンシュタインを模したキャラクターで出演することになった。制作サイドのアイディアだった。演出上、声のみだがフランチェンに指令を出す博士役の人間が必要となり、それを内間が担うことになる。つまり、最終的にはスリムクラブとして出演することができた。
テレビの仕事が定期的に入るようになったことで月収は数万円から一気に50万円ほどに跳ね上がった。内間はこう感謝する。
「結局、僕がいちばん得しました。ギャラも同じだったんで」
ところが2008年冬、そのエンタへの出演が打ち切られることが決まった。真栄田は「真っ暗になった」と振り返る。
「あなた方はクビです、って。まあ、そういう言い方でした。ほんと、怖くて。仕事がなくなって、お金もなくなって。当時、『エンタ縛り』っていうのがあったんですよ。エンタ以外は出ちゃダメだという。だから、他のテレビは全部、断っていたので、クビになって他にお願いしますって言っても、今さらなんだみたいなのもあるじゃないですか」
追い込まれた2人は「キングオブコント」で勝つしかないと、これまで以上にネタ作りに真剣に取り組むようになった。(第4回に続く)
文●中村計(なかむら・けい)/1973年千葉県生まれ。同志社大学法学部卒。著書に『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』など。ナイツ・塙宣之の著書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』の取材・構成を担当。近著に『金足農業、燃ゆ』。