芸能

スリムクラブが語る革命的「スローテンポ漫才」誕生秘話

あの「スローテンポ」はどうやって生まれたのか

あの「スローテンポ」はどうやって生まれたのか

 お笑い界最大の祭典「M-1グランプリ」2010年大会。制限時間内に多くのネタを詰め込むことを定石とする同大会で、あえてテンポを緩める漫才で「M-1史上最大の革命」と呼ばれたのがスリムクラブ(真栄田賢・44歳と内間政成・43歳)だ。だが、彼らは大会の直前まで「漫才には自信がなかった」と語る。そのコンビが「スローテンポ漫才」を生み出すまでの秘話を、ノンフィクションライターの中村計氏がレポートする(全5回連載/第4回)。

 * * *
 そのときもまた、ガードレールで飲んでいた。2010年8月31日、キングオブコントの準決勝の日だった。スリムクラブは三度目の挑戦で、初めて準決勝までこぎつけた。ネタを終え、会場となった赤坂BLITZの外で、2人はビールを傾けつつ、ネットで流される結果発表を待っていた。内間は愉快そうに回想する。

「キングオブコントの予選の中では、今までいちばんウケたんですよ。終わったとき、おっしゃーみたいな感じで。おれは決勝に行くと思ってたんで、打ち上げみたいな気分でした」

 一方の真栄田は、その日の出来を苦い表情でこう追想した。

「“亜空間”に入り込んでしまったかのようでしたね。滑り方が、意味わからなかった。なんか黒い渦に飲み込まれちゃったっていうか。準々決勝はあんなにウケたのに何でよ、って。もう終わったと思いましたね」

 記憶は時間とともに書き換えられるものだが、それにしてもコンビ間でこれほどまでに異なるというのも珍しい。

 どちらの記憶がより正確だったかはわからないが、結果は、落選だった。エンタの神様への出演が消滅してから、2年近く経ち、もう後がないと思って臨んだキングオブコントだった。重い空気が流れる中、内間は突然、「大事な話がありまして……」と切り出した。

「どうした?」
「子供ができました」

関連記事

トピックス

ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン