真栄田は面食らった。
「ネタもつくらんのに、おまえ、子どもつくりやがって、って感じですよ。これは、いよいよ大変だなと思いましたね。神様が『沖縄に帰れ』って言ってるのかな、って」
内間は「ダブルショックだったと思います」と反省する。
「落選で落ち込んでるときに、さらに、ですからね。ずっと、どのタイミングで報告しようか考えてたんです。キングオブコントで調子よく勝ち上がってるときだったんで、よし、じゃあ、優勝した時に言おうとか思ってたんですけど……。そのタイミングを失って、もうここしかないな、と。相方には別のタイミングがあっただろうって怒られましたね」
いよいよ瀬戸際に立たされた。いちおうエントリーしていたM-1の1回戦は、もう間近に迫っていた。前年、M-1でも、初めて準決勝に進出した。とはいえ、2人の本命はあくまでキングオブコントだった。真栄田が話す。
「M-1に関しては、もう手当たり次第、出場できるもんは全部、出場しておこうというぐらいの感覚だったんで」
追い詰められた真栄田は、初めて漫才と正面から向かい合う覚悟を決めた。
「漫才といえば、スーツですよね。なので、これまで、スーツを着たことなかったんで、まずはスーツを着てやってみよう、と。コントって、変な格好して出れば、それでまずウケるんですよ。ジャニーズのオーディションという設定にして、変な格好しているやつが『自分、合格ですか?』みたいな。それだけでおもしろいじゃないですか。でも漫才は、きちんとした格好をして、どうもスリムクラブと申しますから入らなければならない。それがまず怖かったですね」