内間もまったく漫才に自信がなかった。コントの中でも、会話のやりとりが続くシーンは漫才の掛け合いのようになる。しかし、そういうシーンになると途端にギクシャクしてしまった。
「相方がボケてウケる。突っ込まなきゃと思って、僕が『何でだよ』ってやるんですけど、そうすると変な空気になっちゃうんですよ」
◆「素のお前でいればいい」
内間のぎこちないツッコミに対し、真栄田は一度、ステージ上で、内間の肩に手を置き、こう叫んだことがある。
「もう、突っ込まなくていい! 何もしなくていいから!」
それはそれでウケた。ただ、それは真栄田の偽らざる本心だった。真栄田は内間に言い続けていたことがある。
「おまえは舞台の上でも、いつものおまえでいてくれ。おれはおまえと居酒屋で飲んでるとき、楽しいよ。ちびちびやってるときに、突拍子もないことを言うだろ? あれがおもしろいんだよ。それを舞台でもやれよ」
しかし、舞台という特別な場所で、普段の自分でいるということは想像以上に難しい。ノーメークで、もっと言えば、素っ裸で大勢の人の前に立つようなものだ。内間は真栄田に言った。
「自信ないです。自分、ダメ人間なので」
それに対し、真栄田はこう声を荒らげた。
「おれは、おまえが好きで組んでる。おれが好きなものをおまえは否定するのか。だったら、おまえがダメだっていう証明書、持ってこい。市役所で発行してくれるんか。できないだろ。おまえが自分でダメだって言ってるんだよ。誰もおまえのことダメだなんて言ってないよ。今のままのおまえでいい。おれが言っているんだから。な、信じろ」
そんなやりとりがあった後の舞台でのこと。コントの中で、やはり漫才のようなやりとりが続く場面で、真栄田がボケたあと、内間は黙り込んでしまった。そして、ポツリと呟いた。
「……そ、そうなんですか」
すると、今まで経験したことがないほどの爆笑が起きた。