◆ワクチンの有効性は発症予防効果でみる
では、有効性の確認は、どのように行われるのか。基準によると、基本的には、「発症予防効果」をみることが望ましいとされている。発症予防効果は、ワクチンを打たなかった場合と比べて、どれだけ発症する患者を減らせたかという指標で表される。
たとえば、ワクチンとプラセボをそれぞれ100人ずつ被験者に投与したとしよう。しばらくして、ワクチンを投与された人からは20人、プラセボを投与された人からは50人が感染したとする。
この場合、ワクチンの効果により30人(=50人-20人)の感染が予防できたとみられる。したがって、発症予防効果は、60%(=30人÷50人)となる。
感染症の種類によって、発症予防効果は異なる。たとえば、予防接種の効果が一生涯続くとされる、はしかの場合、発症予防効果は90%以上との研究報告がある。
一方、季節性インフルエンザでは予防接種を受けても、その効果は数か月間に限られる。ある研究によれば、発症予防効果は65歳以上の健常な高齢者について約45%であったと報告されている。
このように、ワクチンの効果は100%ではない。たとえワクチンを打っても、感染しないとは言い切れないことになる。
しかし、多くの人がワクチンを打てば、感染者の数を減らすことができ、その結果、感染拡大が抑えられる。つまり、ワクチンによって「集団免疫」が働く効果がある。この集団免疫を効かせるために、早期のワクチン開発が望まれるわけだ。