◆感染症が収束すれば開発中止の可能性も
現在、世界中の医薬品メーカーや研究機関で、新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発が進められている。ワクチン開発に参画している研究の中には、すでに臨床試験を開始しているものや、間もなく臨床試験に入ると公表しているものがある。ワクチンの開発競争は、激しくなっている。
一般に、医薬品開発は、成功・失敗の予測が難しくリスクが大きいとされる。特に、ワクチンの場合、開発途中で、感染症が収束したり、他社のワクチンが先に実用化されたりすれば、開発を中止せざるを得ない事態も起こりうる。
実際に、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、MERS(中東呼吸器症候群)の感染拡大時には、そうした経緯からワクチンの開発が完成に至らなかったといわれる。
今回の新型コロナで、遺伝子ワクチンの開発に取り組む国内の研究者からは、現在自分たちが開発中のワクチン候補は、臨床試験等で人を対象に使用できるようになるまでに最低6か月はかかるとしたうえで、それまでにウイルスの流行が抑え込まれれば、開発を中止する可能性もある──との話も出ている。
いずれにせよ、新型コロナの感染拡大を防ぐには、ワクチン開発が欠かせない。そのためには、研究者の開発リスクを軽減して、速やかなワクチン開発、実用化を図る取り組みが期待される。