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コロナワクチン 熾烈な開発競争でも実用化が困難な理由とは

有効性と安全性の厳しい基準が設けられているワクチン

有効性と安全性の厳しい基準が設けられているワクチン

 感染拡大が止まらない新型コロナウイルス。一刻も早いワクチンの開発が待たれるが、実用化までにはまだ時間がかかる見通しだ。ワクチン開発が困難な理由はどこにあるのか。ニッセイ基礎研究所・主席研究員の篠原拓也氏が説明する。

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 パンデミックとなった新型コロナウイルス感染症は、ここ1か月で、欧米を中心に急速に拡大した。各国で国境封鎖や感染地域からの入国制限、都市封鎖(ロックダウン)などの措置がとられているが、感染拡大は抑止できていない。

 日本でも、東京をはじめ都市部で感染者の数が急増している。感染患者の集中によって医療施設が機能不全となる医療崩壊を避けるために、緊急事態宣言が出され、外出自粛要請や運動施設・遊興施設などへの休業要請が行われている。

 この感染拡大を止めるためには、ワクチンが欠かせない。現在、世界中の医薬品メーカーや研究機関で、新型コロナのワクチン開発が進められている。しかし、実用化までにはまだ時間がかかる見通しだ。その理由はどこにあるのか。

◆3つのフェーズで行われるワクチン臨床試験

 一般に、どんな医薬品でも、有効性と安全性を兼ね備えることが条件となる。特に、ワクチンには、治療薬と比べて高い安全性が求められる。

 感染症に対するワクチンは、健康な人に向けて、予防の目的で投与される。このため、もしワクチンを投与したことで、健康な人が病気になってしまうようなら、大問題となりかねない。

 医薬品開発では、原則として、臨床試験を通じて有効性と安全性が確認される。臨床試験は、法令に定める基準に従って行われる。基準によれば、事前に大学などの審査委員会の審査・承認を受けること、被験者のインフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意)を得ること──などとされている。

 ワクチンの臨床試験は、3つのフェーズで行われることが一般的だ。

 フェーズIは通常、少人数の健康な成人を対象に、小規模な試験として行われる。ワクチンの有効性と安全性に関する、予備的な探索を行うことが目的となる。

 フェーズIIは、健康な人を対象に、ワクチンの使用方法などに関する試験として行われることが一般的だ。対象に、未成年者や高齢者を含むこともある。ワクチンの接種量、接種スケジュール、接種経路を明確にすることが主な目的となる。

 フェーズIIIは、大規模な集団において、有効性と安全性のデータを得ることが目的となる。投与される被験者にも投与する医師にもわからないよう、ランダムにワクチンまたはプラセボ(偽薬)を割り当てて投与し、その効果を比較することで有効性をテストする。これは、「無作為化二重マスク比較試験」と呼ばれている。被験者にも、医師にもわからないため、「二重マスク」ということになる。

 フェーズIIIは、数千人規模の集団を対象とすることもあり、ここで研究開発費の多くが費やされるといわれる。成功して実用化できるか、それとも失敗に終わるか、まさにワクチン開発での最大のヤマ場といえる。

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