さまざまなタイプのワクチンが開発されているが…(写真はイメージ)

さまざまなタイプのワクチンが開発されているが…(写真はイメージ)

◆短期間・低コストで実用化できるワクチンもあるが…

 ウイルスの感染症では、予防のためにワクチンを接種することが有効となる。かつて蔓延した、はしか、水痘、おたふくかぜ、ジフテリア、ポリオ、破傷風などの病気は、ワクチンの予防接種が進み、9割を超える人が免疫をもつようになっている。

 ワクチンには、はしかのように予防接種で免疫を獲得すれば二度とかからないようにできるものもあるが、インフルエンザのように予防接種をしても感染してしまうものもある。ただ、その場合でも、感染後にあまり重症化しないで済むといった効果が期待できるため、ワクチンとしての有効性はある。

 ワクチンのタイプとして、ウイルスなどの原因微生物を発症しない程度に弱毒化したうえで使用する「生ワクチン」と、微生物の全体または一部を感染しないように無毒化して免疫を獲得する「不活化ワクチン」がある。

 生ワクチンは、弱毒化したとはいってもわずかに発症のリスクが残るため、免疫不全者や妊婦には使用できない。はしか、水痘、おたふくかぜなどに対しては、生ワクチンが用いられる。

 一方、不活化ワクチンは、発症のリスクはなくこれらの人にも使用できるが、獲得できる免疫が限られていて、その持続期間も生ワクチンに比べて短い。ジフテリア、ポリオ、破傷風などに対しては、不活化ワクチンが用いられる。

 そして、いま注目を集めているのが、ウイルスの設計図ともいえる遺伝子情報を使う「遺伝子ワクチン」だ。ウイルス本体ではなく、ウイルスの遺伝子を使ってワクチンを作るため、理論上、安全性への懸念は少ないとされる。

 また、開発されたあかつきには、ウイルス遺伝子を組み込んだプラスミドと呼ばれるDNA分子を、大腸菌などを使ってタンクで培養でき、ワクチンの大量生産が可能となる。このため、従来の鶏卵を使った製造法に比べて、低コスト、短期間で実用化が図られる。ただし、これまでに、遺伝子ワクチンが人で実用化された事例はない。

 いずれのワクチンにしても、発症のリスクを減らすもしくは無くす一方で、免疫を獲得できることが条件となる。このために、ワクチン候補について臨床試験で有効性と安全性を確認することが必要となる。

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