樹木さんの本棚の写真を見ながら、当時の会話を思い出す椎根さん
◆『禅とジブリ』鈴木敏夫著
何十年の間も入れ替わらずあった古典の一方、亡くなる直前に本棚に加わったのは、そのとき発売したばかりの鈴木敏夫の『禅とジブリ』(淡交社)だった。スタジオジブリのプロデューサー・鈴木氏が玄侑宗久氏をはじめ3人の禅僧とざっくばらんに対話し、「やわらかく、やさしく、強く」この時代を生きるための禅問答が収められた一冊だ。
樹木さんは鈴木氏とも親交があった。過去にラジオで対談。テーマは夫婦についてで、「離婚する夫婦は向き合いすぎている」など踏み込んだ内容は話題を呼んだ。
「この本の中に『壺中日月長』という禅の言葉が紹介されています。意味は壺中に入ると天国のようないい気持ちになるという心境のこと。
希林さんが亡くなった2018年は『モリのいる場所』『万引き家族』『日日是好日』などの映画に、ドキュメンタリー『転がる魂 内田裕也』のナレーション、映画『エリカ38』のプロデューサーを務めるなど、仕事好きのレベルでは考えられない仕事量をこなしていました。最期の年は、この境地だったのかもしれません」(樹木さん)
※女性セブン2020年5月7・14日号
椎根和さんの著書『希林のコトダマ』(芸術新報社)