国内

コロナ「集団免疫」のために 教訓となるスペインかぜ3度の流行

感染拡大を食い止めるカギは「集団免疫」にある(時事通信フォト)

 一向に終息のめどが立たない新型コロナウイルス。感染者増加を食い止めるために、重要だとされるのは「集団免疫」だという。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんが解説する。

「ウイルスに感染すると、体内の免疫システムが働いて『抗体』ができます。するとその後、再び同じウイルスには感染しにくくなる。こうした抗体を持つ人が人口の一定程度を占めるようになると、ウイルスが人から人へ移動できなくなり、やがて流行が終息します。これを『集団免疫』と呼びます」

 米ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームは、外出規制などで流行と医療崩壊を防ぎながら、徐々に感染者を増やして集団免疫を獲得するまでの期間を予測した。その結果、新型コロナの流行を抑えるために集団免疫を獲得するには、2022年まで「断続的な外出規制」を続ける必要があることがわかったという。『断続的な外出規制』とは、2~3か月の自粛と解除を繰り返す、といった方法だ。

◆ワクチンの世界中への供給は3年かかる

 集団免疫を獲得するには2通りの方法がある。1つは「結果的集団免疫」と呼ばれる方法だ。

 これは多くの人が自然に感染することで、結果的に集団免疫が成立するというもの。前述したハーバード大の試算も外出規制を強めたり解除したりしながら、自然に感染者が増えて集団免疫を獲得することを前提にしている。

 新型コロナの発生源になった中国の武漢では、爆発的感染拡大によって集団免疫を得た可能性がある。上海新型肺炎治療専門家チーム長は「武漢の多くの人が免疫を持っているということは、武漢は中国で最も安全な都市ということになる」との見方を示している。

 だが、結果的集団免疫の獲得には高いハードルがある。集団免疫を得るまでに多くの人の感染が必要不可欠で、死亡者の増加や医療崩壊が懸念されるのだ。

 その困難な道に挑んだのがイギリス政府だった。ボリス・ジョンソン首相は3月、多くの人が集まるイベントの禁止や外出規制をせず、段階的な制限によって多くの人に感染させ、集団免疫を獲得する施策を打ち出した。しかし、国内外から「国民の命でロシアンルーレットをやるのか」との批判が強まると、一転して、ロックダウンやソーシャルディスタンスなどの活動制限に踏み切った。

 日本の安倍晋三首相も4月3日に国会で、コロナ対策の方針として「集団免疫の獲得を直接の目的とはしていない」と答えている。

 集団免疫を獲得する第2の方法は、「ワクチン」によるものだ。多くの人がワクチンを接種することで免疫をつけることができれば、自ずと集団免疫が成立する。

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト