スポーツ

マラソン瀬古利彦氏がモスクワ五輪不参加で得た教訓

ボイコットで涙を呑んだ(写真/共同通信社)

 どうしようもない事情とはいえ、東京五輪の一年延期は、選手たちにとってあまりに突然のことだった。だが、今から40年前、1980年のモスクワ五輪の代表選手は出場の機会そのものを突然、奪われた。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、幻のモスクワ五輪代表で、金メダルも有望視されていた瀬古利彦氏に、40年前の体験と、2020東京五輪の一年延期について聞いた。以下、柳川氏がレポートする。

 * * *
 今より40年前の1980年、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議するアメリカに同調する形で、日本はモスクワ五輪への参加をボイコットした。

 さらに遡れば、80年前の1940年に予定されていた東京五輪も日中戦争の勃発などで日本は開催を返上している。目標にしていた五輪がなくなるという日本選手団にとっての悲劇が40年周期で起きていることに、因縁を感じずにはいられない。

 幻となったモスクワ五輪を、男子マラソンの代表だった瀬古利彦は「記憶から消すようにしていました」と回想した。

「良い思い出ではありませんから。ボイコットの噂が出て、正式に決まるまでの約4か月は、練習に身が入らなかったことを覚えています。ただ、出場できないことになって、悔しさみたいなものはなかった。僕はね、悔しくて泣くことが嫌いだし、涙を人に見せたくないタイプの人間なんです」

 瀬古の言葉にふと思い起こされるのは、ふたりの男の涙だ。正式決定の約1か月前となる1980年4月21日、競技団体の垣根を超えて選手・コーチが岸記念体育会館に集まり、いよいよボイコットを決断しようとしていた政府およびJOC(日本オリンピック委員会)に対して猛抗議した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本ではあまりパートナーは目立たない方がいい」高市早苗総理の夫婦の在り方、夫・山本拓氏は“ステルス旦那”発言 「帰ってきたら掃除をして入浴介助」総理が担う介護の壮絶な状況 
女性セブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン