国内

逆風のパチンコ店「今やめて死ぬか、1年後に死ぬか」が本音

休業要請の中、営業していた東京都内のパチンコ店(時事通信フォト)

休業要請の中、営業していた東京都内のパチンコ店(時事通信フォト)

 大阪府が4月24日の知事会見で、新型インフルエンザ等対策特措法に基づき、休業要請に応じないパチンコホール6店舗の実名を公表した。特措法に基づく公表は全国初で、これに対し「よくやった」「当然だ」という声もある一方で、「やりすぎ」「わざわざフリップを用意していてパフォーマンスが過ぎる」という批判の声もあった。その後、多くの自治体で同じようにパチンコ店への休業を強く求める姿勢に転じている。それらを受けて休業した店舗もあるが、営業を続ける店舗もある。ライターの宮添優氏が、パチンコホールという業態そのものが休業を難しくさせている事情などについてレポートする。

 * * *
「興奮した様子で“今年一番の客入りだ”という上司を見て、この人とはやっていけないと思いました」

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、知事が記者会見で「自粛要請」を訴えた後も、関東のとあるパチンコ店に勤務する斎藤茂也さん(30代・仮名)は、上司の指示によって勤務を続けていたが、先週末、ついに自主的に休職を決めた。

「周囲の店が軒並み休業していますが、うちと他2店舗は営業をしていたため、先週初めから店は満員御礼。普段はライバル店にお客さんを取られる不人気店でしたが、この一週間は朝から行列ができるほどです。コロナへの恐怖感は当然持っていて、入り口に消毒剤を設置し、お客さんが使用した台はその都度消毒するなどしていますが…。いわゆる“3密”状態であることには変わりなく、スタッフの多くは、いつかは感染すると怯えています」(斎藤さん)

 そんな怯えるスタッフを尻目に、一人鼻息が荒いのは店の支配人だ。とにもかくにも、今が稼ぎ時だとスタッフにも積極的な出社を要求し続けているというのである。

「すでにアルバイトやパートのスタッフに、感染の怖さからやめる人が出ています。支配人はそう言った人々に優しい言葉をかけることもなく“今稼がないでどうする”と力んでいます。ただ、支配人の気持ちがわからないでもありません。うちみたいな小~中規模の店でも月の売り上げは億単位。ただでさえ客が減っていて、つい最近はホール内の完全禁煙化対策で大幅な設備投資もしています。上(本部)からも利益を上げるよう言われていて、本人にとっては千載一遇のチャンスなんでしょう」(斎藤さん)

 大阪府では24日、休業要請に応じないパチンコ店の実名公表に踏み切った。SNS上では「要請に従わないパチンコ屋はけしからん」といった論調が盛り上がり、名指しされたパチンコ店の経営者名が晒されるなど、憎悪が差し向けられている。

 北部九州にまたがるパチンコ店チェーンの幹部・櫻井裕人さん(40代・仮名)が悲痛な声を漏らす。

「当店でも、消毒などを徹底し、台と台の間を1台開けてお客様に楽しんでもらうなどの対策をしています。正直、休業できるものならしたいし、休業要請に応じられないからと言って名指しでやられたらたまりません」

 店には、パチンコ店が休業している隣接地域からも客が押しよせ、すでに3月は前年の150パーセント以上の売り上げを記録。今が「稼ぎ時」になっているという事実を、本人も否定はしない。では、休業したい、というのは単なる詭弁なのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン