これまでも度々、日本の漁港に漂着しては保護されている脱北者(時事通信フォト)
◆行き場を失う難民
では、韓国はどうかというと、まず非武装地帯という壁がある。頑丈な鉄条網と約300万個の地雷が埋まっているといわれる幅4kmの非武装地帯を通り抜けることは容易ではない。
結局、非武装地帯を避けて漁船などで韓国へ密入国するしかないわけだが、韓国で脱北者が差別と偏見に苦しみ、やっとの思いで職を得たとしても、同じ仕事でも韓国人よりはるかに安い賃金で働くしかないという現実がある。
超学歴社会の韓国では、一流大学を卒業した韓国人でも安定した職に就くことは容易ではないので、北朝鮮難民は韓国人が嫌がる仕事に就くしかない。韓国では北朝鮮で取得した免許がたとえ医師免許であっても無視されることが多い。
こうして中国にも韓国にも行き場がなくなった人々が、経済難民として日本を目指す可能性が出てくるのだ。日本海を越えてくるのは容易なことではないため、日本に出稼ぎにくる北朝鮮出身者は少数にとどまると予測する専門家もいる。
しかし、日本に不法滞在(不法残留)している韓国人は2019年7月時点で1万2663人にのぼっている。「平時」でもこの状態なのだ。しかも、北朝鮮よりもはるかに豊かな韓国からの出稼ぎである。
北朝鮮の政治が安定し、自由が約束され、さらに経済が日本や韓国と比較しても遜色がないレベルに達するまで、経済難民(出稼ぎ者)の流出は続くだろう。その時、日本は北朝鮮難民にどのように対応するべきか?
北朝鮮難民は全員を強制送還にすべきだが、人道的な配慮も必要だ。一度に大量の難民が漂着した場合など、様々な状況を想定してシミュレーションしておく必要があろう。