そのうえで、アフター・コロナに向けた準備をスタートしたい。
「何も難しいことをするのではなく、本を読んで知識や教養をインプットしたり、在宅勤務中にITを駆使してスキルを広げたりすることなどでいいんです。アフター・コロナの生き方につながるような準備や選択ができれば、いま過ごしている時間には意味があると思えるようになります。たとえば“毎日本を50ページ読もう”と目的をもって何かを継続すれば、小さな成功体験が積み重なり、自己肯定感を持てるようになる。すると“これができたから、あれもできるはず”という自信につながって、把握可能感と処理可能感が高まります」(舟木氏)
ただしこれまで紹介したメソッドは、心の強い人向けかもしれない。なかには長引く禍に不安がたまり、うつ状態になって何もする気が起きない人もいるはずだ。
「ひとは未知のものを前にすると精神崩壊が始まりやすいものです。しかもテレビのニュースやSNSは恐怖を煽りがちなので、なるべく見ないほうがいい。
不安でたまらない人にお勧めしたいのは、日常生活でやってみて、自分の心が晴れたことを日記に書くことです。『思い切り部屋の掃除をしたら気分が晴れた』『お菓子作りをしたら楽しくて時間を忘れた』などとまとめておけば、大きなストレスを受けた時にどんな行動をすれば心が晴れるかのリストになります。どれだけ小さな喜びであっても、積み重ねれば大きな喜びにつながるものです。
逆に日常のなかで自分が嫌に思うことを書き留め、なぜ嫌なのかを追求し、それを避けるためにはどうすべきかを考えることもお勧めです。ストレスへの対処法を積み重ねておくことは、『だいたいわかった、なんとかなる』という把握可能感と処理可能感を高めることにもつながりますからね」(舟木氏)
舟木氏は、病院の精神科でカウンセリングをしている。コロナで院内感染の怖れのある病院勤務を続けるなか、「今の仕事は、これをやっておいてよかったと死ぬ前に思える仕事なのか」と立ち止まって考えた。思い悩んだ結果、「この仕事をして感染するならそれはそれで仕方がない」との結論に達し、リスクのある病院勤務を続けている。
「私にとっても、コロナは自分の仕事に誇りを持てるかどうか考えるきっかけになりました。コロナは人間関係だけでなく、キャリアの整理にもつながります。いかに高邁なスローガンを掲げる会社でも、非常事態のなかで不要不急の出社を命じられたら、会社が本当に自分を大切にしてくれているかどうかわかります。個人だけでなく、企業も“今の職場で働くことの意味”を社員に与えられるかどうかが問われているんです」(舟木氏)