ワクチンは、病原体の正体をはっきりつかめないと開発ができない。実際、40年以上研究されているHIVウイルスは、いまだにワクチンが開発されていない。
「100年以上研究されているインフルエンザも、まだ完璧なワクチンはできていません。そう考えると、新型コロナはわずか5か月で急速に研究が進んでいるといえます」(峰さん)
ワクチンがない限り安心は禁物という専門家の意見をよそに、最近、抗体検査を受けた有名人の奔放な行動が注目を集めている。
4月末には、米国人歌手のマドンナ(61才)が、抗体検査の結果が「陽性」だったとSNSに投稿し、《抗体を持っていることがわかった。だから明日は遠くまでドライブに行く。窓を開けて新型コロナの空気を吸うわ》と語った。
日本では、神田うの(45才)が5月16日に抗体検査の結果が「陰性」だったと報告。これはあくまで「感染歴がない」ことを示すに過ぎないが、なぜか「これで来週憲ちゃん(美川憲一)と安心して会えます」「知らずして周りの皆様にご迷惑をお掛けする事がないという事が分かり良かったです」(原文ママ)などと見当違いの内容をつづり、ネットをざわつかせた。
「陽性」でも「陰性」でも、その結果を前向きに受け止める気持ちは悪いことではない。しかし、現状では、どんな検査結果も自由に人と会って許される“パスポート”になるかははっきりしないのだ。
◆「第二波」への備えのためにも
いますぐは意味を見つけづらい「抗体検査」だが、数年続くとされるコロナ禍の先を見越したとき、本当の力を発揮する。自由診療として新型コロナの抗体検査を実施しているナビタスクリニックの内科医で、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんが話す。
「大規模な抗体検査によって、感染しやすい地域や職種、社会活動の内容などの濃淡が見えてきます。たとえば、中国の研究で、屋外での感染例はほぼないことが判明している。これによって『屋外での活動は緩和しましょう』といった判断ができるようになるわけです。抗体検査は、そういった判断材料の1つになる可能性を秘めている」
さらに、必ず来るとされる「第二波」への備えとしても抗体検査が有効だという。
「ウイルスは感染を繰り返す間に変異し、別の性質を持つことがある。死亡率や感染率の高さから、ヨーロッパと日本では流行したウイルスのタイプが違う可能性が指摘されています。今後、第二波として欧州タイプが日本で流行したとき、第一波の感染状況を把握しておかなければ予測を立てられません」(上さん)
すでに突入した「ウィズ・コロナ」時代。有益な情報を見誤らないようにしたい。
※女性セブン2020年6月4日号