実は1960~1980年代に、他局の勇気ある3人の女性アナウンサーが、配転に抗議して裁判を起こしたのです。「容姿が衰えた」などの暴言が突き付けられたようですが、それが当時の風潮だったのですね。
裁判は3件とも勝訴し、“アナウンサーは専門職”という見方が定着しました。
「女子アナブーム」などと称されましたが、アナウンサーは声の表現者。表現者である以上、ある種のタレント性や魅力は必要です。
雨宮塔子は、狡さやおもねりのない人格の清潔さが愛された理由です。TBSを離れても、自分を失わず着実に表現者として成長し、エッセイにもそれが窺えます。小島慶子は理路整然とした説得力のある読みが得意でした。彼女には「読みで大切なのは行間を読むこと。行間は頭脳と五感とあなたの人生で埋めなさい」とよく言いました。
局アナには、タレント転身の足がかりではなく、専門職としての目標と志を育んでもらいたいですね。
◆取材・文/河合桃子
※週刊ポスト2020年6月5日号