5位の大下は、前述の1951年の記録である。同じリーグなのに、チームによって試合数が異なった変則年にもかかわらず、19年にわたって“シーズン最高打率”の地位を保っていたことも忘れてはならない。
このように試合数が増えれば安打、本塁打、打点など“足し算の項目”が増えるのは当然であり、試合数が減れば“割り算の項目”である打率は高くなりがちだ。
将来的に、NPBは“記録”に対して、試合数の増減やボールの質に左右されない何らかの基準を作るべきだと感じる。言い換えれば、120試合制の今季に“注釈”を付けるなら、全てを見直す必要がある。そうなれば、今までのプロ野球の記録の価値観は一変することになるが、今の段階で現実的な話ではないだろう。
過去に120試合以下で行なわれたシーズンも他の年と同等に扱われていることを考えれば、少なくとも今季の記録に“注釈”を付ける必要はない。
◆文/岡野誠:ライター。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。6月7日、元CHA-CHA木野正人と配信イベント〈『ザ・ベストテン』と昭和ポップスの世界〉を開催(詳細はロフトプラスワンWESTのホームページにて)。