ただ、そうであったとしても、性的能力の衰えは歳を取ったり、病気になれば仕方がないこと。円満に暮らしていた夫婦なら、夫の性的能力の喪失だけで、いきなり夫に対する愛情を失い、離婚を求めるようなことはないと思います。あなたに後ろめたいことがないのであれば、自信を持ちましょう。
とはいえ、性的交渉は婚姻生活の重要な要素ですから、あなたも専門医に相談するなどして、治療を受ける努力をする義務があります。その義務を怠ったままだと、愛情を失いかねません。
なお、単に妻と性交しないだけではなく、同性愛に耽り、妻を顧みなかった場合、またはポルノにのみ強い関心を持ち、AVを見ながら自慰行為ばかりして、妻との性交を拒否した場合などで妻が愛情を喪失、婚姻継続の意思をも失ったと判断し、婚姻を継続し難い重大な事由があると認めた裁判例もあります。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号