「ウイルスが含まれる咳やくしゃみ、会話などによって発生する飛沫は、5マイクロメートル以上のものを『飛沫』と呼び、5マイクロメートル以下のものを『飛沫核』と呼びます。
通常、大きな飛沫は水分が多いため口から出てもすぐに落下して1m未満しか飛びません。感染拡大防止策として2mのソーシャルディスタンスを取ることが求められるのはこのためです。
一方、会話などで生じる水分が小さな飛沫核は、一定期間、空気中に漂います。広州のレストランでは非常に換気が悪くXさんの発した小さな飛沫や飛沫核がエアコンの空気潮流によって室内に拡散し、クラスターを引き起こしたと考えられます」
Xさんから最も離れた場所に座っていた客は4.5m離れており、ソーシャルディスタンスの盲点を明らかにした。
意外だったのは、A卓よりもエアコン吹き出し口に近い“風上”のエアコンの吹き出し口に最も近かったC卓でも2人が感染したことだ。感染症が専門の関西福祉大学の勝田吉彰教授(渡航医学)が言う。
「エアコンの風は吹き出し口から出てまっすぐ流れるものばかりではありません。密閉された空間では、エアコンの風が壁にあたって跳ね返るなどして風上にも戻り、空気を攪拌すると考えられます。このレストランでは窓がなく、換気が行き届いていなかったこともクラスターの原因となりました」
夏場はあらゆる場所でエアコンがかかっている。自宅以外にも、あらゆる外出先の空調に注意すべきポイントがある。
◆「セントラル空調」の施設では…
前述した論文からは、屋内で過ごす際は、エアコンの風の通り道を避けるべきだということが読み取れる。そのうえで気をつけたいのは「換気」だ。先述の通り、広州のレストランではエアコンのほかに換気扇がひとつしかなく、窓がなかった。