コロナを機にセール時期前倒しの見直し論も(2016年撮影/時事通信フォト)

コロナを機にセール時期前倒しの見直し論も(2016年撮影/時事通信フォト)

 百貨店もファッションビルも含めた大都市店は概して苦戦傾向にあります。ある大手SPA企業の幹部によると、「駅ビルはだいたい前年比40~60%の売り上げになっている」とのことです。その一方で、郊外型・地方の大型ショッピングモールは比較的堅調で、「前年比10%減からトントン」という状況だそうです。

 その理由を考えてみると、やはりコロナを警戒する人が依然多いからではないかと考えられます。都心の商業施設は交通手段が電車やバスである場合が多く、混雑しやすい特徴があります。また店舗面積も郊外型店舗に比べて狭いので、店内でも「密」になりやすいといえます。

 かたや郊外型・地方ショッピングモールはロードサイドにあるため、交通手段はマイカーが多く、他人と「密」にはなりません。また店舗面積も都心店より広いので、人との距離を取って買い物もできます。これらを考慮して郊外・地方のショッピングモールに出向く人が多い反面、大都市都心店は敬遠されているといえます。

 様々な対策を施しつつも、アパレル各社の今年の“投げ売り”は、ネット通販に期待している面が大きいと思われます。

 例えば、アダストリアは自社の通販サイト「ドットエスティ」で6月3日から「最大80%オフのサマーセール」を一早く開始しています。またZOZOも「MAX90%オフ ゾゾ史上最も早い夏セール」をすでに開始しています。5月に入ってからも各社のネット通販売上高は伸びる傾向が続いています。

 もちろん、リアル店舗の売上高を完全補填するほどの金額ではありませんが、ネット通販に強い企業は店舗休業の落ち込みを幾分か和らげることに成功しています。直接客と対面しないネット通販なら、どれほど大々的に集客してもコロナ感染の恐れがないので、実店舗でセールを謳いにくい分、ネット通販は例年以上に大きな打ち出しになっています。各社とも破格の投げ売りをして1枚でも在庫を消化したい考えでしょう。

「セールの後ろ倒しが現実的ではない」と前述したのは、ネット通販の現状も理由の一つです。いくら実店舗でセール時期を遅らせようと、ネット通販で大々的にセールを行えば説得力はゼロです。ネット通販で買わない人もブランドやショップの情報は得ているのですから。そして、いまや夏・冬のセールだけでなく、ネット通販で年がら年中在庫品を処分セールしているブランドも数多くありますから、ますます実店舗でのセールの後ろ倒しは現実的ではありません。

 今夏のセール、もしかすると来年正月のセールもリアル店舗はひっそりとしながらも、ネット通販はいつも以上に破格の値引きセールが横行しているかもしれません。コロナ禍でアパレル業界の商慣習がどのように変わるのか。今年は間違いなくそのターニングポイントになるでしょう。

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