アイカサは東京・大阪・福岡といった大都市を中心に事業を展開する。大都市を中心に事業を展開しているのは、傘の貸し出しをする”アイカサスポット”が主に鉄道駅に設置されているからだ。
「サービス開始時は、渋谷の飲食店を中心に設置していました。そこからデパートや行政施設、マンションや鉄道沿線などに拡大していきました。その際、もっとも利用が多かったのが駅だったのです」
そうした利用実態を踏まえ、アイカサは京浜急行電鉄が取り組む”第2期アクセラレータープログラム”に応募。優れたアイデアが認められ、アイカサは採択企業5社のうちの1社に選出された。
「京急電鉄のアクセラレータープログラムに採択されたことが縁となり、鉄道会社から声をかけてもらえるようになりました。そこから鉄道駅を中心にアイカサのスポットは増えていきました。現在、東京圏では京急のほかJR東日本・西武・小田急、大阪圏では阪神・神戸高速・神戸新交通・神戸市営地下鉄、福岡県では西鉄の駅にアイカサのスポットが設置されるようになりました」(同)
外出先で急に雨に降られた際、駅売店やコンビニで傘を購入するしかない。ところが、帰る頃には雨が止んでしまい、せっかく購入した傘が邪魔になってしまう。一度や二度、誰もがこうした経験をしている。
邪魔になっても、購入した傘をきちんと自宅に持って帰る人は多いだろう。しかし、なかには駅や電車内にそのまま“忘れていく”人もいる。
本当に忘れたのか、それとも意図的に忘れられたのかはともかく、駅における忘れ物で、傘はもっとも多い。忘れられた傘の多くは一定期間保管されてリサイクルに回されるが、そのまま廃棄処分される傘もある。
そうした廃棄される傘と、最期まで大事に使われた傘とを同列に論じることはできないが「突然の降雨によって、移動ができなくなる人は1日に100万人いるといわれています。そのうち、約15万人がビニール傘を仕方なく購入しています。また、ビニール傘は年間8000万本が消費されると試算されています。そこから考えると、使い捨てられるビニール傘は多く、それらを0に近づけるべくアイカサはスタートしたのです」(同)と、傘シェアリングへの意義を説く。
アイカサで貸し出される傘は、素材にガラスファイバーを使用している。そのため、ビニール傘よりも強度があり、壊れにくい。ユーザー間で繰り返し使用されることで廃棄される傘の削減、ひいてはゴミの減量化にも結びつく。
「シェアリングでゴミを削減するだけではなく、傘の素材をエコ素材にするなどいろいろな角度から環境問題に取り組んでいきたいと思っています」(同)