「今でこそ新聞社は毎月世論調査を行なっているが、昔は回数がもっと少なかったし、政治家も内閣支持率をそれほど気にしていなかった。
調査の回数が目立って増えたのは“劇場型政治”と呼ばれた小泉内閣の頃からです。自民党の派閥政治が崩れて記者が政治の流れの先行きが読めなくなり、世論調査を根拠に“国民はこの政策に批判的”とか、“賛成が多い”などと報じて、調査を政治報道の重要なツールに利用した。その結果、政治家も、内閣支持率を重視するようになった」
新聞社は世論調査の回数を競い合うように増やし、現在では政治が動いたときには新聞社が1か月に2回、行なうことも珍しくなくなった。朝日は今年5月16~17日と23~24日の1週ごとに調査を行なっている。
そうして新聞が毎月発表する支持率は政権維持のバロメーターと見られるようになった。高い支持率に支えられて長期政権を保ってきた安倍首相は、歴代総理の中で最も新聞の世論調査を重視してきた政治家と言われる。
しかし、いまや国民は政治に対する評価の指針と思っていた新聞の世論調査に戸惑い、支持率に疑問を感じるようになっている。それは安倍首相にとって、政権の依って立つ基盤そのものが大きく揺らいでいることを意味している。
※週刊ポスト2020年7月10・17日号