「じゃ、お香典は振り込むから、口座番号を教えて」と提案し、話は一旦まとまった。
しかし、それを、東京に住む80過ぎた叔母に電話で伝えたら、「香典を振り込むなんて聞いたことない!」と、ガチャ! 電話を叩き切られた。結局、叔母は自力で葬儀場を聞き出し、参列したのだそう。
「ふんっ、コロナが何よ。みんな騒ぎすぎよ」というのが叔母の言い分。「でも、お上が自粛を要請しているんだから」と私。でも心のどこかで、叔母と同じことを考えてもいる。
自粛解除になって、4か月ぶりに乗ったつくばエクスプレスの車窓には空と田んぼが広がっている。それを見たら、政府の要請をきいて葬儀を欠席したことが、ひどく空しく思えてきた。
誰に相談することなく、黙ってひとり、斎場に行って手を合わせるべきだったのか。従兄弟の生前の気弱な横顔を思い出したら、急にかわいそうでたまらなくなった。
ともあれ、いずれにせよ、コロナ禍は決定的に効くワクチンが開発されるまでは終わらないのよね。いまは下火になっても秋以降、大きな第2波、第3波が来るという。終息するまで、どれだけの不平等と、不思議な数字に惑わされるのか…。気が重いけど、気を確かにもって、一日一日を過ごすしか手はないのよね。
※女性セブン2020年7月16日号