国内

小池都知事の新指標と“フリップ芸”に見る警戒感の甘さ

フリップを駆使して会見を行う小池百合子東京都知事(写真/時事通信社)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、新型コロナウイルスの感染状況を評価するための東京都の曖昧な新指標について。

 * * *
 7月5日に行われた東京都知事選は、小池百合子都知事が歴代2番目の366万1371票を獲得し圧勝した。翌日の会見では、東京都の新型コロナウイルス感染防止に集中したいという2期目の決意を表明したが、東京都の感染者は16日に過去最高の286人を記録し、他県と比べて圧倒的に多くなっている。

 こうした感染者数の増加に、菅義偉官房長官は11日「圧倒的に東京問題」と発言。これに対し小池都知事も、「圧倒的に検査数が多いのが東京」と噛み付き、さらに「Go Toキャンペーン」の実施時期を持ち出して「むしろ国の問題だ」と反撃した。

 もともと仲が悪い、馬が合わないという噂が絶えないこの2人。非難合戦からは、「良い事は自分の手柄、悪い事は相手のせい」という「自己奉仕バイアス」を感じる。それだけでなく、食うか食われるかの政治の世界で、感染対策においても誰が相対的に評価されるのか、「どちらかが得をすればどちらが損をする」という「ゼロサム・バイアス」も関係しているように思えてくる。

 個人間の争いが自治体レベル、国レベルへ飛び火しそうな状況に、メディアは「責任のなすり合い」「責任転嫁」と非難した。感染者数が一向に減らない東京都に対し、情報番組のコメンテーターたちも、小池都知事の論点のすり替えと感染対策への無策を問い始めている。だが、ゼロサム・バイアスが強いほど、張り合う2人が協力的関係になるのは難しい。

 彼らの言いたい事はよく分かる。小池都知事の口からはキャッチーな言葉ばかりが飛び出てくるが、感染状況を評価するため6月30日に新たに公表した指標はあやふやだ。新指標では、コロナの感染状況などを7つの項目でモニタリングし、それをもとに4段階の警戒レベルで呼びかけるとしたが、数値基準もなく複雑で、よく分からない指標になっているのだ。

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