大塚家具に手を差し伸べたヤマダ電機の山田昇会長(右)だが…(時事通信フォト)
◆大塚久美子社長の“賞味期限”は、あと1年
現状、大塚家具の業績は最悪だ。決算期の変更に伴う16か月変則決算の2020年4月期の単独決算は、最終損益が77億円の赤字だった。最終赤字は4期連続で赤字幅はどんどん広がっている。
4か月も長い16か月もありながら売上高は348億円。12か月決算だった前期実績(2018年12月期、373億円)をも下回っている。新型コロナウイルスによる臨時休校や外出自粛要請で新学期の需要期にあたる3~4月に客数が落ち込んだのが痛かった。
同業他社と比べても大塚家具の落ち込みは際立つ。家具・ホームセンター大手の島忠の2020年8月期の売上高にあたる営業収益は、前期比3%増の1508億円、純利益は1%増の60億円を見込む。「家具を買い替える家庭が増えている」という“新常態”をうまく取り込み、数字として示した。
絶好調なのは家具大手のニトリホールディングスだ。一時、全店の約2割にあたる110店で休業したが、2020年3~5月期の連結決算の売上高1737億円、純利益255億円と過去最高となった。テレワークの広がりで仕事用の机や椅子が売れ、収納家具やキッチン用品も伸びた。
似鳥昭雄会長(76)は決算会見で、「外食しなくなり、洋服も買わなくなった。そのお金が家の中で使われている」と分析した。家庭で豊かに暮らすために、使い古した家具とオサラバする人が増えているというのだ。
緊急事態宣言で止まっていた人の動きが、解除を受けて徐々に戻りはじめているが、こうした消費を「リベンジ消費」と名付け、株式市場では盛り上がっている。コロナで外出を制限され、不要不急の買い物を我慢してきた人々の、新たな購買行動をリベンジと捉えている。
大塚家具は、新たに家電の取り扱いを開始したことから、5月以降月次情報の開示をやめている。リベンジ消費の大波に、はたして乗れているのだろうか。
山田会長は買収会見で、「ウチは結果主義。黒字にできるというからやらせる。(久美子社長に)1年任せる」と語った。久美子社長の賞味期限は、あと1年。2021年4月期に黒字転換できなければ、フェードアウトする運命にある。
ヤマダ社内からは早くも「完全子会社(※2019年12月現在、51.3%の出資)にしたほうが合理的」という声が聞こえてくる。2012年に買収したベスト電器は完全子会社となり、上場廃止されている。
上場廃止すれば、株価や株主への目配りをせずに、リストラを円滑に進めることができる。有価証券報告書の作成など上場を維持するために必要なコストも減らせる。
このまま業績が上向かなければ、大塚家具の看板が消滅し、“ヤマダ家具”になる日は近そうだ。