今年7月、記録的な豪雨が九州から本州までを襲い、甚大な被害を出した。迫りくる自然災害からどのようにして身を守るか。「地名」には、その土地の安全性を知る上でのヒントが隠されている。
今回の記録的豪雨による球磨川の氾濫では、熊本県南部に浸水被害が広がったが、なかでも行方不明者が出るなど被害が甚大だった地域を見ていくと、芦北町「田川」「女島」、津奈木町「福浜」という地名がある。
「『川』や『沢』『滝』『浜』のような水を連想させる地名は、水害の被害を受けやすいことが表われていると考えられます」
そう語るのは『この地名が危ない』の著者で地名研究家の楠原佑介氏だ。
今回の被害地域で多く見られたのが「瀬」のつく地名である。熊本県では、人吉市「下薩摩瀬町」、芦北町「箙瀬(えびらせ)」、球磨村「神瀬(こうのせ)」がある。土砂災害地では茨城県日立市「会瀬(おうせ)」、静岡県南伊豆町「市之瀬」、静岡県掛川市「高瀬」、広島県尾道市「瀬戸田町」に「瀬」がついている。長野県の孤立集落には木曽町「砂ケ瀬地区」があった。
「瀬」とは、川の浅く流れているところを指すが、他にも意味がある。
「『瀬』は『狭い』に通じる漢字。狭くなっている地域には、流水が集中する可能性が考えられる。今回の球磨川の氾濫では、上流からの水流が狭窄部で滞って洪水になったとされ、『瀬』がつく地名も警戒が必要と考えられます」(楠原氏)
※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号